家族の縁が切れるその前に!失敗しやすい中小経営者の相続対策

皆さんは、2015年に相続税の基礎控除が下がったことを覚えていますでしょうか。

以前は相続の際に、5000万円+1000万円×法定相続人の数まで基礎控除として、相続財産から差し引けるルールでした。

しかし、2015年からは、3000万円+600万円×法定相続人の数までと、大幅に基礎控除が減ってしまったのです。

この影響により、以前は相続税を支払う人の割合は大体4%程度でしたが、2015年以降は倍の8%にまで割合が増えました。

諸説ありますが、古くは江戸時代から現代に至るまで、日本人の多くは家族間でお金について話すことを避けてきました。

それが、結果として現代の社会問題となってしまった多くの相続トラブルを招いています。

そこで今回は、知らなきゃ家族の縁さえ切れてしまう相続のこと、について解説をしたいと思います。わかりやすく説明をしますのでぜひ参考にしてください。

目次

相続税を支払う人は確実に増えていく

冒頭のとおり基礎控除の減額となって以降、相続税を支払わなければならない人は増加傾向で、特に中小経営者・家族の割合が高くなっています。

あくまで8%というのは日本全体の数字であって、不動産や会社の株式(自社株)を所有している場合、相続税が発生するリスクは高まります

コロナ禍の影響で、いまや都心部のみならず地方部の不動産価格も上昇傾向にあり、今後も上昇していくと予想する専門家が多数います。

歳出が増加し歳入が減少傾向にある日本では、不動産を含め一定の金融資産があれば、さらに多くの人が相続税あるいは新たな税金を納める時代が来るかもしれません。

まずは、相続税は決して人ごとではないという認識が必要です。

そして、お金のことを家族間でオープンに話せる仕組みをつくり、家族間で骨肉の争いとならないよう、早めの争族対策が求められます。

相続税の支払い=お金で解決できれば御の字で、相続対策をしないことで家族の縁が切れてしまったり、会社の存続が難しくなったり、取り返しのつかない事態は絶対に避けなければなりません

次の章から、相続によって不幸な結果になってしまった事例についてお話しますので、ぜひ参考にしてください。

相続税の不幸事例①〜不動産

相続税の支払いは、ひと昔前であれば不動産などの物納も認められていました。

しかし現在では、現金以外の納付は原則認められていません。

相続税が発生した場合、十分な現預金があれば問題ないかもしれませんが、相続財産のうち不動産が多くを占める場合、相続税納付用のお金に窮してしまいます。

なぜなら、不動産を売却するには時間がかかりますし、法定相続人である家族全員の同意が必要だからです。

もし、家族全員が既に独立して世帯が分かれている場合、さらには遠方にいて疎遠になっている場合、すぐに連絡を取って理解を求め、相続人全員から同意書を集めるのは至難の業です。

お金の話のみならず普段からコミュニケーションが取れていない場合、些細なボタンの掛け違いで意見が対立し、相続をきっかけに家族の縁が切れてしまうケースは後を絶ちません

もし、普段から家族間でお金の話をしていて、生前に相続対策ができていたら、家族の縁が切れてしまうという最悪の事態を防げた相続は少なくないと思います。

このように、不動産が相続財産の多くを占める場合、家族間の関係性を壊してしまう可能性が高まりますので注意してください。

相続税の不幸事例②〜自社株の継承

中小法人を経営しているor家族が経営している場合、自社株も相続の際に非常に大きな火種になります。

なぜなら、相続財産に自社株も含まれるため、自社株の評価が高いと莫大な相続税が発生してしまうからです。

「自社株を売ってしまえばいいのでは?」と思われる方もいるかもしれませんが、自社株の売却はそんなに簡単なものではありません。

そもそも、上場していない中小法人の自社株を『買いたい』という第三者を見つけること自体が困難ですし、仮に自社株を売れたとしても、会社の経営権まで第三者に移ってしまうリスクもあります。

スムーズに事業承継をして安定した経営を続けるためには、自社株の対策は絶対に欠かせません。

しかし、多くの中小経営者は業務に追われ、自社株の対策はおろか、自社株を誰がどれくらいの割合で保有しているのかさえ把握していないのが現実です

自社株対策をしないまま放置していると、結果的に多額の相続税が発生し、後継者が日々資金繰りに追われれてしまうという事態を家族が招くことになりかねません。

代々続けてきた会社の経営を、第三者に安値で譲らなければならないケースなど全国各地で発生している今、自社株対策は早め早めが肝心です。

まとめ

今回は、相続税にまつわる話をしました。

日本は、世界最速で高齢化が進んでおり、70歳以上の経営者が245万人いる国です。

日本の企業の99%が中小企業であり、中小企業の発展なくして日本の未来はありません。

今後さらに増えていくと予想される相続の問題は、日本人にとって待ったなしの問題です。

未だに『お金の話をしないことが日本人の美徳だ』と偏った見方をされることがありますが、決してそんなことはありません。

早期に適切な相続対策ができるか否かが、大切な家族はもちろん、中小企業に勤めている方やその家族、中小企業が支えるこの国の運命を左右させるといっても過言ではありません。

ぜひ今回の記事を参考にしていただき、相続対策の必要性や、家族でお金の話をする必要性について理解していただければ幸いです。

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この記事を書いた人

亀井 貴文のアバター 亀井 貴文 FP・戦略財務・M&Aコンサル

30歳で脱サラして3社を経営しながら18社の顧問FPを担当
【主な資格】◆AFP◆証券外務員一種◆事業承継・M&Aエキスパート◆相続診断士◆公的保険アドバイザー◆1級法人クレジットカード相談士
【過去実績】法人134社・個人1746名にFPサービスをご提供
※令和4年現在まで

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