銀行・保険・証券で資産を失う日本人

日本人は、先進国の中で金融知識が最低クラスというレッテルを貼られてしまっています。

1996年の日本版金融ビッグバンで『貯蓄から投資へ』とスローガンが打ち出されて25年余り、ようやく今年から高校の家庭科で金融教育がスタートしました。

しかし、家計の金融資産は2021年末で全体2023兆円に対し、現金預金+保険年金=1632兆円と、未だ銀行や保険会社に大きく依存している状況です。

この【依存】こそが、日本人が資産を失う大きな原因となっていることに、もうそろそろ気づいてアクションしなければ、将来さらに大きな資産を失うことになりかねません。

そこで今回は、銀行・保険・証券で資産を失う日本人というテーマでお話したいと思います。

わかりやすく解説しますので皆さんの資産防衛の参考になれば幸いです。

目次

なぜ金融機関は顧客利益より自社利益を優先してしまうのか?

お金のことで何か相談しようと思ったとき、顔見知りの【銀行マン】【保険屋さん】【生保レディ】に相談しようと考える方は多いのではないでしょうか。

特に、よく利用する銀行(ゆうちょ銀・信金・信組など含む)や、保険の更新でよく会う担当者は、安心して相談できる先だと思っている方も多いのではないでしょうか。

しかし、そう思われた皆さんは特に注意してください。

皆さんが日頃から安心して相談している金融マンにも、家族があり生活があるので仕事で成果を出さなければなりません。

30年以上も経済が低迷し、超少子高齢化が進む日本では資金需要も弱まり、お金を融通することが本業である金融機関の儲けは、超低金利時代で非常に先細ってしまいました。

そうした時代の中で、金融マンが評価される成果は、皆さんの利益とは相反するケースが目立つようになっています。

全国各地の金融機関で懐事情が厳しくなっていき、顧客利益よりも自分たちの利益確保のため、手数料が高い金融商品を売らなければ経営が成り立たなくなってしまいました。

経済成長も資金需要も弱い日本で、多くの社員と支店を維持するには、顧客利益を無視してでも自社利益を優先せざるを得ない構造的な問題を抱えているのが金融業界です。

次の章では、顧客利益を無視した具体例について解説しますので、知らず知らずに資産を失っていないか点検してみてください。

金融機関が顧客利益を無視している具体例とは?

銀行をはじめとした金融機関が、顧客利益より自社利益を優先している具体例を紹介します。

  • 投資信託の回転売買
  • 外貨建て終身保険の積極販売
  • 節税保険の推進販売

皆さんも知らずに購入・契約しているかもしれませんので、いま一度この機会に点検してみてください。

投資信託の回転売買

投資信託の回転売買とは、短期間のうちに何度も投資信託の買い替えをさせる営業手法です。

購入時に手数料の発生する投資信託を顧客に販売し、短期間でまた売買を繰り返せば、その都度、手数料が金融機関に入るカラクリです。

手っ取り早く稼げる手法として多くの銀行や証券会社で行われていました。

金融庁から厳しい指導が入り、かなり下火にはなっていますが、未だに行っている金融機関もあるらしいですので注意してください。

回転売買を行ってしまうと手数料負担が大きくなり、顧客側の利益はその分失われてしまいます。

例えば手数料が3%かかる投資信託を年に3回乗り換えた場合、3%×3回=9%の手数料がかかることになります。

年間で9%超の投資リターンを得るのは非常に難しいことですので、回転売買がいかに顧客利益を無視した手法であるかお分かりいただけるのではないでしょうか。

そもそも投資信託という商品は、長期に保有することで複利効果を高め、利益を積み重ねていくものが多い金融商品です。

そうした性質の金融商品を、短期間で売買を繰り返させる行為自体、顧客利益を無視していると言われても仕方ないと思います。

外貨建て保険と変額保険の積極販売

続いて外貨建て保険(終身・年金)や変額保険についてですが、こちらは現在進行形で積極的に販売されていますのでご用心。

結論から申し上げますと、先ほどの投資信託の回転売買と同様、金融機関側が高い手数料を得られるカラクリです。

まず、外貨建て保険とは、米ドルや豪ドルなど日本円に比べ金利が高い通貨を利用=市場リスクを内包した資産運用の側面をもつ保険です。

日本円に比べ金利を高く設定できるため、パンフレットなどの高金利のキャッチコピーが消費者への甘い誘惑になります。

一方で、『為替リスク』という馴染みのない言葉は、投資経験の浅い日本人の耳に入ることはなく、高い手数料も営業マンの重要事項説明の中で詳しく聞くことは期待できません。

また、変額保険は、契約者から預かった保険料で通貨のみならず株式や債券などで運用し、その運用実績によって保険の金額が変動する商品です。

外貨建て保険も減額保険も、全てを否定するつもりはありませんが、多くの商品で手数料が高いうえに、為替リスクや価格変動リスクなどに常に晒されているという認識が必要です。

銀行などの大型の保険代理店は、保険会社から見ると超優良顧客になるため、保険販売をした際に受け取れる手数料が最も高いランクに位置しています。

外貨建て保険や変額保険を販売すると、ルで10%を超える手数料が銀行に入ってくることもあるのです。

近年、これらの保険販売を金融庁も問題視していますが、ゼロ金利政策や指値オペが続き円安が進みやすい日本では、金融機関側にとって販売しやすい環境となっています。

ここでもやはり、顧客利益の優先<金融機関の利益確保の構図になっていると言えます。

節税保険の推進販売

節税保険とは、法人が契約者となり役職員を被保険者(保障対象者)とする保険の中で、保険料の一定割合を損金(非課税)処理しながら解約返戻金が貯められる生命保険のことです。

社長が大好きな『節税』という甘い誘惑を巧みに利用して、全国で市場規模は右肩上がりに増え、8000~9000億円という貴重な経営資源が保険料に変わってしまったと言われています。

保険会社から受け取れる手数料が高かったこともあり、全国の保険屋さん・生保レディ・銀行マン・税理士さんが節税トークを強調して多くの中小企業に販売をしていました。

事態を重く見た金融庁と国税庁は、2019年2月に節税保険の即時販売停止という鉄槌を保険会社に振り下ろしました。

節税保険に関する生命保険業界vs金融庁のイタチごっこの歴史は古く、今回は国税庁まで動く大騒動となったようです。

金融庁は節税保険の歴史に終止符を打つべく、再発しないよう『節税効果はありません』というA4ペラ1枚の冊子を、全ての生命保険会社に作らせ、 契約者に案内させるという徹底ぶりです。

金融業界以外の方は知らない方が殆どだと思いますが、金融業界では2019年の大騒動を『バレンタインショック』と呼んでいますが…

今後、中小企業が新たに契約できない=貴重な売上を保険料で浪費しない観点で見れば、日本経済にとっては『バレンタインプレゼント』だったと個人的には思っています。

本来、保険という金融商品は手持ちのお金で賄えないリスクに対して、必要な分だけの保障(補償)を低廉なコストを払って準備しておくものです。

以前のブログでも触れたましたが、法人も個人もお金を守り増やしていこうと思ったときに、保険は不要な場面が多いのが現実です。

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ここでも、節税効果に騙されて契約した顧客(中小企業)の利益< 金融機関の利益となり、契約者側が貧乏くじを引く結果になってしまいました。

節税保険は、未だ全国で多くの中小企業が契約したまま放置されている状況です。

『節税効果が高いですよ。』と言って販売していた担当者が、『ごめんなさい。あれ実は嘘でした。』とは言いにくいので、今後も放置され続けられる可能性は高いです。

今年(2022年)に入り、『名義変更プラン』『おかわりプラン』と社内で名付け、節税保険の販売を続けていたとされる保険会社が発覚しました。

金融庁検査により厳しい指導が入るようですが、金融庁vs生命保険会社のイタチごっこはまだまだ続きそうです。

金融機関で買ってはいけない商品について

最後に、金融機関で買ってはいけない商品はたくさんありますが、特に要注意な商品を2つ紹介します。

  • 毎月分配型投資信託
  • 仕組債・EB(Exchangeable Bond)

これらの商品がなぜ買ってはいけないのか?について簡単に解説したいと思います。

毎月分配型投資信託

毎月分配型投資信託は、以前、銀行や証券会社が強烈に販売推進をしていました。

『定期預金が増えない時代なので、毎月お小遣いのように分配金が受け取れる投資信託が断然お得です。』といった巧みな営業トークで、年金暮らしの高齢者を中心に多くの人が購入をしていました。

しかし、毎月受け取れる分配金の実態は、投資した元本からの取り崩しで運用効率が悪く、輪をかけて手数料が高い商品が多いため、手数料負け&元本割れというリスクが高まります。

投資信託を購入する際、資産規模や資産形成のステージなどにもよりますが、基本的に分配金が出ない分配金再投資タイプのものがお勧めです。

仕組債・EB(Exchangeable Bond)

仕組債やEB(Exchangeable Bond)は、特にいま注意が必要な商品です。

なぜなら、ここ数年、銀行や証券会社などの金融機関が積極的に販売している商品で、販売者側にとってローリスク・ハイリターンの商品だからです。

しかし、ローリスク・ハイリターンという金融商品が存在するはずはなく、購入者側がハイリスク・ローリターンを請け負っていることで成立するカラクリという訳です。

前述した外貨建て保険のように、投資経験の浅い日本人にパンフレットなどの高金利の部分を大きく強調させ、ハイリスクの隠れみのにしています。

顧客利益が軽視される時代、表面的な高金利の誘惑で金融機関が提案してくる金融商品は、すぐに契約(購入)せず、一度よく精査する習慣をつけましょう。

まとめ

今回は、銀行や保険会社、証券会社などの金融機関で資産を失う日本人、というテーマで解説をしました。

顧客利益を無視してでも自社利益を優先せざるを得ない、構造的な問題を抱えている金融業界は、今後もあの手この手を使い、高い手数料の金融商品を勧めてくることは必然です。

結果として、日本人同士で足を引っ張り合い、日本全体で少しずつ貧しくなっている状況です。

昔と違い、誰でもすぐに世界中の投資情報を大量入手することができたり、金融教育が高校で始まったり、日本人の金融知識は今後高まっていくと期待されます。

人生100年時代に備えるためにも、金融知識のアップデートを続け、まずは、1日も早く現状を正しく把握することが重要です。

今回の記事を参考にしていただき、金融機関と付き合う際は注意していただければ幸いです。

これからも、有益な『知らなきゃ損するお金のこと』を、ブログで発信していきますのでご期待ください。

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この記事を書いた人

亀井 貴文のアバター 亀井 貴文 FP・戦略財務・M&Aコンサル

30歳で脱サラして3社を経営しながら18社の顧問FPを担当
【主な資格】◆AFP◆証券外務員一種◆事業承継・M&Aエキスパート◆相続診断士◆公的保険アドバイザー◆1級法人クレジットカード相談士
【過去実績】法人134社・個人1746名にFPサービスをご提供
※令和4年現在まで

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